崩壊(2)

 

修二は軽く舌打ちをすると、教室に戻って行った。


俺の躯はガクンと力が抜け、その場に座り込んだ。

「…」
無音の空間が恐怖を煽る。


『俺をこんなにしたのは草野だよ?』
さっきの修二のセリフが甦る。

ガクガクと躯が震えた。

確かに修二を此処まで導いてしまったのは俺…。
だけど、こんな修二を愛したんじゃなかった…。

俺が愛したのは…修二によって創られた"桐谷修二"だった…。

俺は誰にでも平等に微笑む"修二"を愛した。


##

「しゅーうーじくんっ♪」
修二の背中に勢い良く飛び付く。
「うわぁっ」
見事バランスを崩した修二は前のめりに倒れた。
「っ…」
何処かぶつけたのか、修二は顔をしかめ、そして
「何やってんだよ…」
呆れたように云った。

「愛情表現だっちゃv」
テヘ☆っと笑う。
「いいから降りろ」
そう云って俺を退かす。
「あのさ…」
座ったまま修二を見上げて口を開く。
「何」
誰にでも平等な修二も俺には凄く冷たい。

「…何でもない」
立ち上がり、汚れてしまったズボンを叩く。

「ヘンなヤツ…」
修二はそう云うと行ってしまった。

「バカっ」
悔しくてボソッと呟いた。



「野ブタは好きだけど…修二くんを好きってのとは何か違うのよーん」

修二に貰った(正確には修二のお母さんにもらった)ブタの置物に話しかける。

「でも、どっちも失いたくないのよーん…。これってワガママなのかな?」

この頃ずっとこのことで悩んでいる。

どっちも大事
どっちかなんて有り得ない

それが正直な気持ちだった。

「はぁ…」
無意識に溜め息が漏れる。

「彰〜っ、飯だぞ」
「あ〜い」
おいちゃんに呼ばれ、居間へ向かった。



「今日も豆腐?」
卓袱台の上には、ところ狭しと豆腐料理が並んでいた。
「豆腐だ」
自慢気においちゃんが笑う。
「お昼も豆腐だったのよーん」
「イイじゃないか。美味いだろ?」
「そうだけど…」
「よし、食うぞ」

いとも簡単に俺の反論は流され、またしても豆腐料理を食べるハメになってしまった。