アンダルシアに憧れて

 

「月・・・綺麗だね」
 寝室のカーテンを開け、秋の夜長を過ごす。
「今日は満月だな」
 フワリと髪を掻き揚げて、滝沢が微笑んだ。
 髪が月の光でキラキラ光る。
「綺麗・・・」
 無意識に俺の口から漏れた言葉。
「いや、それさっきも言ったから」
 クスクスと滝沢が笑う。
「月がじゃなくてっ!」
「ん?じゃぁ何?」
 キョトンと俺を滝沢が見つめる。
「た・・・たきざぁが///」
 心臓がバクバクと音を発てる。
 きっと、滝沢にも聞こえてるんだろうな///
「ぷっ、意味分かんないから」
「馬鹿っ!意地悪っ!///」
 まともに顔を見れるわけもなくて、プイとソッポを向いた。
「もぅ、たきざぁなんか知らないっ!!///」
「ごめん、ごめん。でも、翼がいけないんだよ?」
 背中に優しい温もりを感じる。
「俺は悪くないもん///」
「いーや、翼が悪い。そんな可愛い顔するから意地悪したくなるんだよ?」
 滝沢の細長い指が俺の髪の上を滑る。
「悪い子には、やっぱりお仕置きしなくちゃ・・ね?v」
「Σひゃぅっι」
 くるっと身体が反転し、滝沢の顔が目の前にある。
「もう、モノ欲しそうな顔しちゃってv」
「しっ、してないっ!!///」
「えー?ここ、こんなんだよ?」
 キュっと胸の突起を摘まれる。
「痛っ」
「翼は、痛いの好きでしょ?」
 今の俺は、滝沢の嘲笑った顔にすら欲情してしまう。
「翼はホント、厭らしい子だなぁ」
「ん・・・っ、ちが・・ぁっ」
 俺は、身体を撫で回す滝沢の指先に感じながらも、どこか物足りない感覚に陥っていた。
「何が違うの?こんな厭らしい顔して」
 滝沢の右手の甲が俺の右頬に触れた。
「んぁっ///」
 ピクンと俺の肩が跳ねた。
「感じてるの?」
 人をこバカにしたような笑みを浮かべ、滝沢が耳元で囁いた。
「ちっ、違う///」
「違くないでしょ?」
 滝沢が妖しく微笑い、下腹部に手を伸ばした。
「あっ///」
「どうしたの?」
「んっ・・・たきざ・・・バカぁ///」
 ズボンの上から弄られ、もどかしさに身体が震える。
「ヤっ・・・///」
「翼、厭らしい…」
 滝沢に囁かれ、 ゾクゾクと背筋が震えた。
 声だけでイかされてしまいそう・・・そんな感覚が俺を襲う。
「もうイきそうな顔してる」
 そんな俺の心情はあっさりと滝沢に見抜かれてしまう。
「ね?次はどうしてほしい?」
「ヤっ・・・意地悪・・・///」
「ふふっ。翼が可愛いからだよ?」
「ちがっ///」
 身体中を撫でる滝沢の手に一々反応してしまう自分が口惜しい。
「っ・・・ぁあ・・ヤっ・・」
「翼、もっと声、聞かせて」
 執拗に攻めたてる滝沢の声が艶っぽい。
「くっ・・ぁ・ん・・ダ・・めぇ・・」
「ねぇ、翼?まだ服着てるんだよ?」
 ククッと滝沢が笑う。
「ふぁ・・・///」
「もう、こんなにして・・・」
「んっ・・・はぁっ、ヤっぁだっ///」
「ヤなの?」
 ピタっと滝沢の手が止まる。
「う・・・あっ・・//」
「ヤなの?」
 ジっと眼を見つめられて身体が熱を増す。
「たき・・ざ・・・も・・キてぇ///」
 堕落
 そんな言葉が脳裏を過った。

 

「翼・・・行ってくるね」
 途切れかけの意識の中で滝沢の優しい声が耳に届いた。

 

「え?たきざぁが?!」
 あれから2週間が過ぎた。
 俺の耳に衝撃的な事実が告げられた。
「ねぇ、どういうこと!?たきざぁが・・・たきざぁが・・・っ」
 それ以上は声にならなかった。
 喉が裂けるほど叫んだ。泣いた。
 もう、帰ってこない・・・。
 それだけが事実だった・・。

 

 マネージャーが事故だと告げた。
 最期まで俺の名前を呼んでいたと涙を流した。
「ごめんな・・・翼」
 滝沢が最期に残した言葉だった。

 何度も何度も繰り返した。
 ずっとずっと、忘れないように・・。

 

 皮肉にも、今日はあの日のように月の綺麗な日だった。

「たきざぁ・・」
 もう滝沢はいない。
 解ってる。
 でも、繰り返すんだ。
 忘れないように。消えないように。
「寂しくない?恐くない?」
 滝沢に語りかけるように、月に声をかけた。
「俺は大丈夫だから。だから・・・」
 やけに大きく感じるベッド。
 やけに冷たく感じる室内。
 何もかもが意味を無くしたカンジ・・・。

 音のしない部屋が嫌で、たまたま近くにあったコンポに手を伸ばす。

 

アンダルシアに憧れて バラをくわえて踊ってる

「・・・今の俺にぴったりじゃん」
 もう、何度も歌ったメロディーを口ずさむ。


地下の酒場のカルメンと 今夜メトロでランデヴー
ダークなスーツに着替えて ボルサリーノをイキにきめ
いかすクツをはいた時に 電話がオレを呼び止めた

受話器のむこうがわでボス 声をふるわせながらボス
ヤバイことになっちまった トニーの奴がしくじった

スタッガーリーは言うのさ 今夜 港で決着を
立ち入り禁止の波止場の 第三倉庫に8時半

誰か彼女に伝えてくれよ ホームのはじで待ってるはずさ
ちょっと遅れるかもしれないけれど かならず行くからそこで待ってろよ



激しい痛みが体を 電光石火でつらぬき
はみだし者の赤い血が カラッポの世界を染める
うすれていく意識の中 オレはカルメンと踊った
アンダルシアの青い空 グラナダの詩が聞こえた

誰か彼女に伝えてくれよ ホームのはじで待ってるはずさ
ちょっと遅れるかもしれないけれど かならず行くからそこで待ってろよ

 

 かならず行くからそこで待ってろよ

 いつになるか分かんないけど

 必ず行くから

 そこで待ってろよ・・・・

 

 

-あとがき-

はい、ようやく上がりましたー。
死ネタなのになんか意味不明ですねぇ;

てゆか、たきざぁ死んだぁー

なんで死んだんだろー(投げやりだなぁ;

まぁ、書きたいの一個書けたからイイや☆