愛のMelody
ある土曜日の昼下がり。
まったりとリビングでくつろぎ『新婚さんいらっしゃい』を眺めている。
「ねぇ、ねぇ、健ちゃん。俺等もこれに出たいねv」
クイクイとシャツの裾を引っ張りながらニコニコと井ノ原が云った。
「出ないし」
苦笑いを浮かべながら三宅が応える。
「え〜っ、何でぇ?」
「『何で』って…。新婚じゃないしぃ?」
「出たい〜、出たい〜」
駄駄っ子のように手足をバタつかせる。
「無理だよ・・・」
三宅は相変らず苦笑いのままだ。
「あのさぁ、大抵の我侭は可愛いから許しちゃうけど、それはちょっと無理だなぁ」
ヨシヨシと井ノ原の頭を撫でてやる。
これではどっちが年上か分からない。
「可愛いのは俺じゃなくて健ちゃんなのvV」
そう云ってぎゅぅっと抱きつく。
「はいはい」
グイっと井ノ原を引き剥がし、昼食の準備のため立ちあがる。
「もぉ〜、冷たいなぁ。でもそこも好き〜vV」
そう云って後ろからぎゅぅっと抱きつく。
「お腹空いたでしょ?ご飯作るね」
「え〜っ、ご飯より健ちゃんが食べたい〜」
そう云うとゴソゴソとシャツの中に手を入れてきた。
「ダメぇ〜っ」
三宅がジタバタと抵抗する。
「えぇ〜。最近健ちゃん冷たいよぉ〜」
ウルウルと目を潤ませ三宅を見つめる。
「あのね〜・・・」
不覚にも胸きゅんしながら困ったように笑う。
「健ちゃんは俺のこと嫌い?」
きゅ〜んと効果音が付きそうな目をして井ノ原が問う。
「えっ・・・いや・・・それは・・・」
演技だと分かっていながらも躰は正直で抱き締めたい衝動に狩られる。
「『それは』何?」
尚もウルウル光線を出しながら三宅を見つめる。
「すっ・・・好きだよ///」
この場から消えてしまいたい衝動に狩られる。
「あ、やっぱりぃ?健ちゃんも俺の色気にのっくあうとぉ?」
ニヤニヤと三宅のほっぺたをつつく。
「やーめーろーよー。大体、色気って…色気ないでしょ」
ペチペチと井ノ原の手を叩きならがら毒を吐く。
「ひっ・・・酷い…」
ぺたんとその場に座り込む井ノ原。
そんな井ノ原を見下ろす三宅。
「健ちゃん、俺のこと嫌いなんだ?」
井ノ原お得意のウルウル光線で三宅を見つめる。
グッっと言葉に詰り、うろたえる三宅。
「嫌いなんだね?だからそうやって意地悪するんだ?」
尚もウルウルと三宅を見つめる。
「分かった。じゃぁ、俺出ていくよ」
井ノ原はそう云うとスっと立ちあがり玄関へ向かう。
「えっ、ちょっ、、、」
その後を戸惑いながら三宅が追った。
「お見送りしなくて良いよ」
井ノ原が寂しそうに笑う。
「ちょっとまって…」
咄嗟に手を掴んだ。
「ご、ゴメン。そんなつもりじゃなくって…えっと…それで…」
しどろもどろになりながらも、どうにか井ノ原を轢き止めようとする。
「それで…俺、イノッチのことホント好きだし…。だから…その…」
がばっ
「健ちゃん…」
井ノ原がイキオイ良く抱きつく。
「わっ、イノッチ?!」
「良かったぁ。実はカマかけてたの☆」
「かっ、カマ?!」
井ノ原がウンウンと肯く。
「だって、健ちゃんってなかなか『好き』って云ってくれないんだもん」
テヘっ☆と笑う。
「だから、ちょっとタメしてみたの。ゴメンね・・・」
涙目で立ち竦む三宅の頭を撫でてやる。
「バッ、本気で恐かったんだぞ。居なくなったらどうしようって・・・」
涙が頬をつたる。
「ゴメンゴメン」
「今度やったらホントに別れるから」
ボソっと井ノ原の胸の中で呟いた。
「えっ・・・」
「つーかさー。イノッチはオレの事好き?」
意地悪そうに笑う三宅。
「何云ってんの〜?好きに決まってんじゃん。いっつも云ってるでしょ?」
ヘラヘラといつものように笑う。
「何なら証拠を見せてあげようか?」
「証拠?」
ひょいっと三宅を抱え寝室へ向かう。
「えっ、ちょっと・・・」
「動くと落ちるよ?ってか、健ちゃん軽〜いvV」
鼻歌交じりでご機嫌の様子。
「はい、着いた♪」
そっと三宅をベットに降ろし、そそくさとカーテンをひく。
「えっ、証拠って・・・もしかして・・・」
「ん?」
既に服を脱ぎはじめている井ノ原。
「ちょっと、ちょっと!!」
おたおたと慌てる三宅。
「何?」
「『何?』って…まだお昼だよ?」
「『証拠欲しい』って云ったの健ちゃんだよ?」
「云ってないよ・・・」
しかし、問答無用で三宅の服を脱がしにかかる。
「やっ、ちょっと。くすぐったいから」
あまりのくすぐったさにきゃはきゃはと笑う。
「えーっ、じゃぁ自分で脱ぐの?」
意地悪く笑う。
「脱がないしーっ」
イーっと顔をしかめベットから降りる。
「え〜っ、なんでぇ?」
「何でも」
スタスタと寝室を後にしようとする。
「健ちゃ〜ん」
問答無用と云わんばかりにその場に押し倒す。
「痛っ」
モロに背中をぶつけた。
「健ちゃんが大人しくしてないから〜」
もぉと頬を膨らませる。
「お腹空いた〜」
あれから1時間弱。
井ノ原の弱弱しい声が寝室に響く。
「ね〜、お腹空いたぁ」
隣でスヤスヤと眠る三宅を揺さぶる。
「・・・」
が、起きない。
「健ちゃん〜」
更に力を入れて揺さぶる。
「んー・・・何ー?」
まだすっきりしないらしく、欠伸をかみ殺す。
「お腹空いたー」
「ご飯要らないって云ったのイノッチだよ?」
うーんと伸びをして起きあがる。
「云ってないよー」
「云った。だからご飯なし」
その辺りに散らばっている服を着ながら三宅が云い放った。
「え〜っ、云ってないよ〜」
「云ったの。で、いつまでそんな格好してるつもり?」
「健ちゃんがご飯作ってくれるまで☆」
「じゃぁ、夜までそのままだね」
ニヤリと笑う。
「え〜っ。酷い〜」
「ご飯より、俺を食べたかったんでしょ?食べたし、満足だよね?」
どうやら、さっき散々苛められたことを根に持っているらしい。
意地悪くニヤニヤ笑う。
「ご飯も食べたい〜」
甘えた声を出す。
「え〜っ、知らな〜い」
きゃははっと笑い寝室を後にする。
「健ちゃ〜ん」
扉の向うから井ノ原の弱弱しい声が聞こえてくる。
「早く服来て出ておいで。しかたないから何か作ってあげる」
ドタバダと寝室の方で音がする。
「わ〜い、健ちゃん優しい〜vV]
ものの20秒できちんと服を着た井ノ原が出てきた。
「早っ」
「えへっ☆ご飯は?」
椅子に腰かけ、バタバタと足を動かす。
「今から作るから。ちょっと待って」
「は〜い☆」
元気良く手を挙げ、鼻歌交じりでご飯が出来るのを待つ。
「出来たよ〜」
美味しそうな匂いが部屋を満たす。
グ〜と井ノ原のお腹が鳴った。
「…お待たせ」
笑いを堪えながら三宅が遅い昼食を運んできた。
「オムライスだ〜っvV」
大好きなオムライスを目の前にし、自然とテンションが上がる。
「ご飯がいっぱい余ってたからね」
はいっと水とスプーンを差し出し、井ノ原の正面に座る。
「いっただっきま〜っす☆」
勢いよく手を合わせ勢いよく食らいつく。
「美味しい〜vV」
はぅぅ〜と目を細める。
「良かった」
にっこり微笑み三宅も食べはじめる。
「ごちそー様でした☆」
キレイに完食し、ぽむっと手を合わせる。
「片付け、俺がやるねー」
井ノ原がいそいそと立ちあがり片付けをはじめる。
「えー?良いよ。俺がやる」
まだ口をもごもごさせながら健が静止させようとする。
「良いの、良いの。ゆっくり食べてて良いからねvV」
しかし、井ノ原は止まることなくキッチンの片付けを始める。
気が気でないらしく、ソワソワとし始める三宅。
がしゃん
キッチンの方で皿の割れた音がした。
「イノッチっ!?」
凄い勢いで立ちあがるとキッチンに走っていく。
「イノッチ!!」
そこにはうな垂れる井ノ原がいた。
「大丈夫?!」
きょろきょろと辺りを見回し、一目散に井ノ原のところに寄って来た。
「俺は平気だけど…。これ」
井ノ原の目線の先にはキレイに粉々になった皿が散乱していた。
「ホントに怪我してない?!」
ぐっと腕を掴み怪我の有無を確信する。
「大丈夫だってば」
少々困ったように笑う。
「そっか。良かった…」
「それより…」
これと指を差した先には粉々の皿。
「あ、掃除機持ってくるから。動いちゃダメだよ!!」
云い終わらないうちに掃除機を取りに走っていった。
「あっ、動かないでっ!!」
「そこもダメっ!!」
「ホラ、そこは破片が…」
30分の格闘の末、どうにかキレイに片付いた。
「もぉ、絶対片付けとかしちゃダメだからね!!」
冷めてしまった昼食を食べながら三宅が頬を膨らませる。
「ゴメン、ゴメン。今回のはちょっとした手違いで」
ワタワタしながら必至に弁解する井ノ原。
「ダメ〜。怪我したらどうするの?」
「ゴメン〜。でも、健ちゃんが怪我したら…」
「俺は良いの!!」
まったく・・・と溜息を吐く。
「さっきも気が気じゃなかったんだからね」
ようやく食べ終わり立ちあがりながら井ノ原を睨みつける。
「は・・・はい」
「よろしい」
にぱっと笑いそのままキッチンへ向かう。
「絶対、大人しくしててよ!!」
釘をさすことを忘れずに。
愛のMelody/TBS系「学校へ行こう!」テーマソング